【院長ブログ】入れ歯ノイローゼ(歯を抜かれて総入れ歯になる恐怖)
おはようございます、Dr.森嶋です。今回は、25年前の私の体験談を書かせていただきます。
お読みの方は、入れ歯になりますと精神的にも老化することを知っていますか。歯を残すことの大切さには、入れ歯にならずに精神的老化現象に歯止めをかけることも含まれているんです。
さて、私の体験談ですが、口腔外科の医局時代に某精神病院の歯科に派遣されて短期間勤務したことがあります。
多くの患者様が、口腔内の衛生管理が難しく虫歯になりやすい状態でした。いくら虫歯の治療をしてもまたそこに虫歯ができて歯がどんどんだめなっていく患者様が大半でした。残念でしたが歯を抜いて入れ歯にする治療が主でした。入れ歯になった患者様は、無気力になりがちでますますお口の手入れができなくなり、短期間で総入れ歯になりました。精神科の医師に総入れ歯になるとノイローゼ状態が悪化する(入れ歯ノイローゼ=歯を抜かれて総入れ歯になる恐怖がノイローゼ状態にする)と言われていましたが、いざ自分の患者様が総入れ歯(総義歯)になり、ノイローゼになることに直面しますと、安易に歯を抜いて入れ歯にすることに疑問を感じました。このことで歯を残す技術の修練に拍車がかかりました。
また、口腔外科が専門でしたので、精神病で苦しんでいる患者様が受け入れられる入れ歯を作成することは非常に困難でした。困難な入れ歯作成を模索しているうちに総義歯の大家・桜井先生と出会うことができました。先生の教えを受けることができ、精神病で苦しんでいる患者様が受け入れられる入れ歯を作成することに成功して、現在の入れ歯があります。
今振り返ってみますと某精神病院の歯科に勤務して得難い経験ができ飛躍的に技術が向上しましたが、当時は左遷された悲哀に荒れた心境でした。フランクルは、「苦悩により如何に高められし」と人生の苦悩を自己向上の機会と捉えていますが、私みたいな凡人は運がよくて偶然に高められた思っています。